管理栄養士鼎談 前編:プロアスリートの食事管理

 

新型コロナウイルス感染症の世界的な感染拡大の影響で、スポーツ界はもちろん、あらゆる場面で活動制限や行動自粛が引き続き行われています。
さらに今年の夏は世界的に記録的な気温の上昇が見られることもあり、例年以上に日々の体調管理と栄養管理の重要性が増しています。
今回は大阪・舞洲に拠点を持つ、3つのプロスポーツチームに携わる管理栄養士の皆さまにご協力いただき、スポーツにおける栄養摂取のポイントについて、リモート鼎談を実施いたしました。この模様を前半、後半と2回に分けてお届けします。

 

前編のテーマはプロアスリートの食事管理です。

(2020/7/29 リモート収録)

 


 

--今日は大阪エヴェッサ、オリックス・バファローズ、セレッソ大阪の各クラブの管理栄養士の皆さんにお集まりいただきました。
スポーツをプレーしている子どもたち、そしてその保護者の方は、日々の栄養についてどのようなことを意識すればよいのか、を考えていただくきっかけにしたいと思います。

では、最初に自己紹介をかねて、皆さんが普段どのような仕事をしているのか、そして各クラブにどのように携わっているのかを教えてください。

 

山本尚代さん(以下山本) 大阪エヴェッサの管理栄養士の山本尚代と申します。
私はチームに雇われている栄養士ではありません。大阪エヴェッサを運営するヒューマンプランニング株式会社が飲食事業も手掛けておりまして、その中のひとつとして「おおきにアリーナ舞洲」の中にある「Athlete Table(以下アスリート・テーブル)」というレストランがあります。
アスリート・テーブルは、スポーツ栄養に特化したレストランでして、私はそこでのメニュー作成や調理、セミナーの開催、また他の企業様とのタイアップでのメニュー開発などをさせていただいています。他にも病院からの委託事業でカフェを運営していますので、そこのメニュー監修もさせていただいています。
アスリート・テーブルには、大阪エヴェッサの選手、時には同じ舞洲に拠点を置くオリックス・バファローズの方やセレッソ大阪の選手の方も来てくださることもあります。もちろん、一般の方も自由に入れますので、ぜひ一度お越しください。

 

河南こころさん(以下河南) オリックス・バファローズの管理栄養士の河南こころです。
私は球団専属の管理栄養士ということで、ほぼチームと同じ動きをしています。
チームは一軍とファーム(=二軍)に分かれていますが、球団からの要望で、私は普段、舞洲で活動する主に若手中心のファームをメインにサポートさせてもらっています。

 

中村奈央さん(以下中村) セレッソ大阪の中村奈央と申します。
私は日本ハム株式会社中央研究所の所属で、2014年からセレッソ大阪アカデミーの栄養サポートを担当しています。
セレッソ大阪アカデミーは、プロサッカー選手を目指す子どもたち、小学生から高校生までで280名ほど在籍しているのですが、そういった選手やその保護者さん向けに食事や栄養の大切さを伝えています。

 

--皆さん、少しずつ立場は違っていますが、トップチームの選手と日常的に最も接しているのは河南さんということですね。河南さんは、逆に子どもと接する機会は、あまりないのでしょうか?

 

河南 そうですね。私がサポートしているのが、球団に所属しているプロの選手ですので、そこに子どもはいませんね。

 

--山本さんは一般の人も訪れることのできるレストランを通じて、子どもとは接することが多いということでしょうか?

 

山本 そうですね。アスリート・テーブルには一般の人も来られるので、そこで色々な年代の人と接しています。
私はフリーランスという立場で大阪エヴェッサに携わらせていただいているので、それ以外の自分の仕事として、メタボリックシンドロームの方向けや、スポーツ内科クリニックでの栄養相談を行っているため、そういった様々な機会に一般の方やジュニアの方と関わる機会を少しは持てています。

 

 

 

正しい食事が動ける身体をつくる

 

--皆さん、携わっている競技は違いますが、それぞれの競技による特性はあるのでしょうか?練習日や試合前後などでどのような工夫をしているかを教えてください。

 

河南 そうですね。例えば同じ練習日といっても、練習内容や練習時間は日々異なります。
午後の練習も午前中にやってしまうことになると、練習が終わるのは13時を過ぎることもあります。当然、お昼ご飯の時間が、通常よりはちょっと遅くなるので、練習の合間に補食が食べられるように準備したりしますし、試合日であれば、試合の合間にちょっとつまめるようなものを準備するなどしています。

 

--摂取量は選手個々に任せているのでしょうか?

 

河南 そこは個人に任せています。

 

--同じプロ選手といっても高卒1年目と、大学や社会人を経てきた選手とでは年齢がだいぶ違いますが、年齢に応じてバランスを変えることはありますか?

 

河南 高卒3年目くらいまでの選手には、バランスよく食べましょうという基礎的な話をすることが多いですね。
細かいことを言っても、実際の練習や試合を繰り返す生活の中で、それを実践することは難しいので、ポイントを大まかに解りやすく伝えて、それを実践してもらうというスタイルでやっています。

 

--試合後の疲労回復のメニューというとどんなものが中心ですか?

 

河南 メニューというよりは、運動直後にしっかり補給しようというタイミングを声掛けしています。あとは選手に聞かれれば、個別にお答えするという感じです。

 

--適正摂取量は年代によって異なってくるのですか?

 

中村 そうですね。年代があがれば、体格も大きくなりますし、練習量やトレーニングの強度も高くなります。そのため年代によって食事量も異なります。

 

--アカデミー年代でも、試合後は疲労回復の食事は用意していますか?

 

中村 試合前後に食べる食事は、各選手が自宅から持ってきてもらいます。
私からはお勧めの補食アイテム、それもコンビニやスーパーなどで手に入りやすいものを提案しています。
試合前に食べる食事については、普段の練習で、運動前に何をどれくらい食べてもパフォーマンスに影響しないか確認をし、それを試合の日に活かしてほしいと伝えています。
試合後に食事を食べる場合は、帰宅後の食事に影響しないように、食べる量を調整してほしいことも伝えています。

 

--山本さんはどのようなやり方ですか?

 

山本 私は具体的にチームの栄養管理をしているわけではないので、方法論といってもざっくりとした話になります。
競技特性としては、野球とサッカーでいえば、バスケットボールはサッカーに近いと思います。持久力も必要ですが、バスケットボールはスピード感も強く求められるので、瞬発力が必要になりますので、その辺りも意識していく必要があるのだと思います。
私のいるレストランはチームからオーダーを受けて、おにぎりやフルーツといった補食の提供などが主な関わり方になります。

 

中村 河南さんにおうかがいしたいのですが、野球はポジションが違うと求められるものは違ってきますか?

 

河南 うーん。野手は走ることもあるので、体重を増やしすぎると走れなくなると言う選手が多いかなという印象はあります。
投手は多少体脂肪率が高くても、一軍でバンバン投げている選手もいるので、野球にとって体組成の優先順位が高いのか、まだ分かりません。
にラグビーチームのサポートをさせていただいたのですが、そこでは日本代表選手の各ポジションの体組成の数値をもとに、自チームの選手の体重や体脂肪率などの目標値が設定されていました。
しかし、野球はもう少し個人の感覚を重視する部分が大きいのかなと思います。

 

--河南さんは、選手の体重とか体脂肪の管理をしているのですか?

 

河南 栄養サポートで介入できるのはウエイトマネジメントとか疲労回復とかになってくると思うので、体重などの体組成のチェックは頻繁にしています。

 

中村 セレッソ大阪のアカデミーは小学生から高校生の選手なので、アカデミー全体として食事や栄養に関する基本的な知識や態度の定着を目指しています。
よりプロに近い高校生年代の選手では、体重や体組成の変化などから個別にサポートをすることもあります。

 


 

次回は「育成年代の食事管理」をテーマにお届けします。

 


過去の河南こころさんインタビュー記事(第1回第2回

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